新型コロナウイルス感染症の流行によって、一般生活者の皆さんも「感染対策」に敏感になったのではないでしょうか。歯科医院は口の中の治療ですので、唾液や血液がたくさんでさぞ感染が心配されるのではないかと思います。私の医院では「いつもと同じ」診療スタイルをとっています。必要な個人防護具(マスク、ゴーグル、グローブ、エプロン)を装着し、きちんと器材を洗い、滅菌や消毒をしています。今回の感染症の蔓延で対策として加えたことは受付で受診前の体温のチェックをさせていただいているぐらいです。
なぜいつもと同じ診療スタイル?
私たち歯科は新型コロナ感染症を発症している方の治療をしているのではありません。基本的に普通に生活をしている人を相手にしています。医療の基本的な考えは「誰がどんな感染症を持っているかわからない」という認識で対応します。これを標準予防策またはスタンダード・プリコーションと呼びます。歯科医院では治療前に問診のみです。自己申告です。ただ、この自己申告だけではわからないことが多いです。人に移すような病気(感染症)をご本人が知らないだけ、もしくは発症していないだけでお持ちかも知れないのです。だから医療現場では基本的にどのような診療科でも、この考えをもとに医療サービスを行っています。
標準予防策とは
「標準予防策」の考えは「すべての人が感染症を持ってる」という考え方です。感染症の原因になるウイルスや細菌などを感染源(体)といい、標準予防策では「汗以外の湿性の体液は感染源」として取り扱うのが医療での基本的な考え方になります。判明している感染症の有無よりも、皆が「何らかの感染症を持っているかもしれない」と考えるほうがどんな感染症にも対応できるので、これが今の世界的な医療の考えです。
意外に多いのです。日本でのHIV感染者
東京都福祉保健局のウェブサイトにもありますが、AIDS患者・HIV感染者は先進国の中で日本が増加し続けています。その他、B型肝炎では2011年度で110から125万人の感染者がいます。C型肝炎は100万から150万人です。かなりの数の感染症の人がいます。新型コロナウイルス感染症も世界中にパンデミックを起こしてしまうような感染症ですが、感染症はこれだけではありません。すべての感染症に罹患しないように考えることが大切です。歯科医療現場ではいつも意識をしています。
病原源はどこにある?
先述しましたが、感染源は基本的に「湿性生体物質」の中にあると考えて対応します。「湿性生体物質」とは、血液、体液全般(汗を除く)客痰、排泄物、精液やおりもの、傷、粘膜も含みます。そして、それらが付着したリネン類や器具も感染症の原因の物質があるとして考えます。したがって、感染対策は病原源のあるところに対して、どのように対応するかを考えます。
まとめ
感染症の有無の申告に関わらず、標準予防策(スタンダード・プリコーション)の概念で医療行為を行うことが現在の考え方です。この考え方を知っておくと感染対策とはどのようなことを基本的に考え、どのように行うと良いかの基本が理解しやすくなります。覚えておいてくださいね。