消毒用エタノールについて考えよう

医療

アルコールワッテとかSPガーゼとか、アル綿とか・・・。様々な呼び名をもつアルコール綿花。ユニットのサイドテーブルの脇に常備してますか?アルコールで何でもかんでも拭いてませんか?アルコール綿花に使用される消毒用エタノールついて考えてみましょう。

消毒用エタノールの特徴

アルコール綿に使用するエタノールやイソプロパノ-ルは消毒薬を分類すると中水準(中域)消毒薬となります。 栄養型細菌に対して即効的に殺菌作用を示します。インフルエンザウイルスのようなエンべローブを持つタイプのウイルスには効果がありますが、ノロウイルスを代表とするエンべローブのないウイルスには効果が得られにくい面も持ち合わせています。

粘膜には使用できませんが皮膚は使用可能です。予防接種前に皮膚を消毒した記憶がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 アルコールの忘れてはいけない特性として「揮発性」と血液を凝固させる「タンパク凝固作用」があります。

「揮発性」を考える

院内で作製し、使用しているクリニックは綿花に対するアルコール量は適正ですか?と、質問を受けることがありますが、脱脂綿1gに対してエタノール(イソプロパノール)5mlをめどに作成します。基本的にアルコール綿花は作り置きをしてはいけません。日本歯科医学会監修の「院内感染対策実践マニュアル」には容器内にアルコールが十分量あれば1週間程度使用可能と記載されていますが、容器の形態、使用状況によりエタノールの蒸発が懸念される際は1日ごとの交換が望ましいとも記載されています。アルコールの揮発を考慮すると1日分ずつ使用する量に対してアルコール綿花を作ることが安全です。ちなみにアルコールの継ぎ足しはしてはいけません。

私の医院ではアルコールと綿花を別々に準備してあります。使用時にアルコールを綿花に染み込ませて消毒対象物に使用しています。そうすればアルコールの揮発を心配せずに使用することができます。ただ、この揮発性の特徴は欠点ではありません。この揮発性があるからこそ、医療機器など水分でダメージを受けてしまいそうなものにアルコールは有効使用できます。

「タンパク凝固作用」について

アルコールは血液を凝固させてしまう作用があります。ですから基本的に血液が付着しているところを清拭することはできません。昔からの習慣で器材に血液が付着するとアルコール綿で拭きとっている人は今日から改善です。器具に付着している血液は処置中であれば「水を染み込ませたガーゼでの拭き取りで十分です。その後処置が終了したら、しっかりと洗浄し、滅菌あるいは消毒です。

まとめ

消毒用アルコールはとても便利な消毒薬ですが、使用方法もきちんと押さえておきたいものです。揮発性がある消毒薬の長所と短所を理解して、作り置きには気をつけましょう。そして歯科医療現場では特に唾液や血液が多い場所ですので、安易に器具に付着した血液などを拭き取ってしまうことは消毒の意味にはなりません。器具に付着した血液は洗浄してから滅菌または消毒することが必要と覚えておきましょう。