執筆・監修:長谷川雅代(歯科衛生士・臨床30年以上)
毎日つけているマスク。だからこそ「なんとなく」で使っていませんか。
マスクは、正しく着けてはじめて力を発揮します。向きが逆だったり、顔に合っていなかったり、外し方が雑だったり——ちょっとしたことで、防御力はぐっと落ちてしまいます。今日は、意外と知られていないマスクの“基本のき”を整理します。
1. マスクには「表」と「裏」がある
サージカルマスクは、外側と内側で役割が違います。外側は水をはじく面、内側は湿気を吸う面。色のついた面が外、白い面が肌側、が一般的です。
プリーツの向きにもヒントがあります。多くの製品では、外側から見てプリーツの折り目が下向き(谷が下)になるのが正しい向き。上向きだと、折り目にほこりや飛沫がたまりやすくなります。ただし向きの決まりは製品によって異なることもあるので、迷ったらパッケージの表示を確認してください。
2. プリーツは「広げて使う」もの
マスクの蛇腹(プリーツ)は、飾りではありません。広げることで、あご下まで覆えるように作られています。
プリーツをたたんだまま、口元だけにちょこんと乗せていませんか。それではあごや頬にすき間ができ、そこから空気が出入りしてしまいます。鼻からあごまで、プリーツを伸ばしてしっかり覆う——これが基本です。

3. 二重マスクは意味がある?
「重ねればもっと安心では」と思うかもしれません。でも、基本は“正しく1枚”です。
二重にしても、フィットが悪ければすき間からの漏れは防げません。むしろ息苦しくなってズレやすくなり、手で触って直す回数が増える——これは汚染のもとです。より高い防御が必要な場面では、二重にするのではなく、用途に合ったマスクや、必要に応じてN95などを正しく選ぶのが筋道です。「枚数」より「フィット」。ここが分かれ道です。
4. 自分の顔の大きさに合うものを選ぶ
どんなに高性能なマスクでも、顔に合っていなければ、すき間から漏れて意味が半減します。マスクは「顔とのフィット」で選ぶものです。
大きすぎれば頬や鼻の横にすき間ができ、小さすぎればあごが出てしまう。ノーズフィッターを鼻の形に合わせ、頬にぴたっと沿うサイズを選びましょう。顔の大きさは人それぞれ。「みんなと同じ」ではなく、自分に合う一枚を見つけることが、正しい第一歩です。

| 測った長さ | サイズの目安 |
|---|---|
| 9〜11cm | 子供用 |
| 10.5〜12.5cm | 小さめ |
| 12〜14.5cm | ふつう |
| 14cm以上 | 大きめ |
出典:日本衛生材料工業連合会(測定方法・サイズ目安)
5. 外すときは「ゴムを持って」
使い終わったマスクは、外側も内側も汚染面です。特に前面は飛沫を受け止めています。だからゴム(ひも)だけを持って外し、面には触れない。
外したあとは、手指衛生までがワンセット。着けるときは気をつけても、外すときに油断しがちです。丁寧にいきましょう。
6. マスクをポケットに入れない
ちょっと外したマスクを、ポケットに入れたり、あごにずらして“あごマスク”にしたり——つい、やっていませんか。
一度使ったマスクの表面には、飛沫や菌が付いています。それをポケットに入れればポケットの中を汚染し、あごにずらせば首やあごの汚れをマスク内側につけてまた口元に戻すことになります。マスクは外したら捨てる、保管しない。これが清潔を保ついちばんシンプルなルールです。

明日からできる3つのこと
- 広げて、鼻からあごまで覆う:プリーツを伸ばし、すき間をなくす。
- 顔に合うサイズを選ぶ:フィットしないマスクは効果半減。
- ゴムを持って外し、ポケットに入れない:使用後のマスクは外側も内側も汚染面になっている。
参考文献
- CDC「Summary of Infection Prevention Practices in Dental Settings」(2016) https://www.cdc.gov/oral-health/hcp/infection-control/index.html
- 日本歯科医学会監修「エビデンスに基づく一般歯科診療における院内感染対策実践マニュアル」(永末書店)
- 日本環境感染学会 各種ガイドライン(個人防護具の選択・着脱)
- ※マスクの向き・構造は製品により異なる場合があります。最終的には各製品の表示・添付文書(IFU)をご確認ください。

長谷川 雅代
歯科衛生士(臨床30年以上)/歯科感染管理協会 監修
1993年堺歯科衛生士専門学校卒。30年以上の臨床経験を持ち、現在も臨床に立ち続けることで「歯科医院の今」を熟知する。その豊富な知見を強みに、スタッフ教育や院内環境の改善に携わる。DHマネジメント協会に所属し、新人教育や標準予防策に基づく意識改革を提案する専門家として全国で研修を行う。理想論に留まらない、現場を知るからこそ可能な実践的感染管理システムの構築とマニュアル整備に注力している。

