使用済みの器材を入れて、スイッチを押して、取り出す。
超音波洗浄器は、多くの歯科医院で用いられる身近な洗浄の道具です。超音波で洗浄している・・・。だからこそ、「入れれば、きれいになる」と思われがちです。
でも、超音波洗浄は万能ではありません。入れてはいけないものがあり、入れていいものでも、入れ方で結果が変わります。
この記事では、超音波洗浄器に入れてはいけないものと、効き目を落とさない使い方の基本を、理由とあわせてまとめます。
POINT 超音波は「入れれば落ちる」ではなく、「泡が届けば落ちる」。泡が届かないものは落ちず、泡を吸ってしまうものは、まわりの洗浄まで弱めます。入れていいかどうかは、器材の取扱説明書で確かめます。
超音波は、どうやって汚れを落としているのか
超音波洗浄器の中では、洗浄液に目に見えない小さな泡が生まれては、つぶれています。
つぶれる瞬間に大きな力が生まれ、その力が器材の表面から汚れをはがします。キャビテーションと呼ばれる現象です。
ここで大事なのは、落としているのは「液」ではなく「泡」だということ。
泡が届かない場所の汚れは落ちません。そして、泡の力を吸ってしまう材質のものが入っていると、その器材だけでなく、まわりの器材の洗浄まで弱くなります。
「入れてはいけないもの」を確認しましょう。
入れてはいけないもの
器材の超音波使用の可否の確かめ方は、ひとつです。
器材の取扱説明書に、超音波洗浄の「可」「不可」が書かれています。
書かれていなければ、型番を控えてメーカーに聞きます。「この製品は、超音波洗浄器に入れてもよいでしょうか」。それだけで答えが返ってきます。
POINT 「入れてはいけない」は、器材を守るためだけの話ではありません。泡を吸う材質のものが1つ入っていると、いっしょに入れた器材の洗浄まで弱くなります。1つのために、全部の結果が変わる。だから分けておく価値があります。
入れていいものでも、効かなくなる入れ方
入れていい器材でも、入れ方で泡の届き方が変わります。
底に直接置く
器材は、必ずバスケットに入れます。直に底に置くと、超音波を出している面に直接当たり、器材にも機械にもよくありません。多くの洗浄器の取扱説明書にも、底に直接置かないよう書かれています。
重ねる・詰め込む
重なった部分には泡が届きません。「入れたのに、ここだけ汚れが残っている」の正体は、たいていこれです。
液面から出ている
ガイドラインには、器材のすべての表面が洗浄液に浸かるように入れること、と書かれています。液から出ている部分は、洗えていません。
空気だまり
コップのような形や筒状のもので中に空気がたまると、その部分に液が触れません。空気が抜ける向きに置きます。

細かすぎる網目
バスケットの網目も、泡の届き方に関わります。
ガイドラインに載っている下の図は、網目の大きさ(1〜18mm)を変えて、超音波がどれだけ通り抜けるかを測ったものです。1mm前後の細かい網目でいちばん弱まり、網目が大きいほど超音波がよく通ります。ガイドラインは、1mmを下回らない網目のバスケットを使うこととしています。
だから、茶漉しのような細かい網(網目は0.2〜0.5mm程度)に入れて洗うのは避けます。器材が落ちない範囲で、目の粗いものを選びましょう。DICAでは、5mm程度以上を目安にしています。これはガイドラインの数字ではなく、図を読んでDICAが置いた目安です。
いま使っているバスケットで効果が出ているかは、あとで紹介するアルミホイルの方法で確かめられます。

出典:一般社団法人日本医療機器学会『医療現場における滅菌保証のガイドライン2015』付属書C 図3-5(p.48)。2026年版では附属書6C 図6-4として掲載。原典:白井健至「超音波洗浄」『真空』1983, Vol.26, No.11
使い方の基本の流れ
細かな条件は洗浄器と洗浄剤で違います。ここでは、多くの製品に共通する流れを示します。


洗浄液は、汚れたら交換します。交換の頻度は、洗浄剤と洗浄器の取扱説明書に従ってください。
超音波のあとの器材は、まだ「不潔」です
ときどき、超音波洗浄を「消毒」だと思っている人に出会います。
超音波洗浄は、洗浄です。汚れを落とす工程であって、微生物を減らす工程ではありません。
槽の中の洗浄液は、落とした汚れが溶けこんだ汚染水です。取り出すときも手袋を。取り出した器材は、消毒か滅菌の工程へ進みます。
どの器材が消毒で、どの器材が滅菌かは、器材再生処理まるごとガイドで整理しています。
ちゃんと動いているか、確かめられます
超音波は、目に見えません。音がしていても、泡が十分に出ているとは限りません。
ガイドラインの附属書には、アルミホイルを使って泡の力を確かめる方法が載っています。超音波が出ていれば、ホイルに穴やしわができる。できなければ、点検が必要です。
いま使っているバスケットに器材を入れた状態で試せば、そのバスケットで効果が出ているかも分かります。ホイルの粉が槽に残らないよう、やり方にはコツがあります。細かい手順は、洗浄器の取扱説明書か、メーカーに確かめてください。「鳴っているから大丈夫」ではなく、「確かめたから大丈夫」に変えられる方法です。
監修者の視点
超音波洗浄器は、医院に当たり前にあるものです。当たり前にあるものほど、使い方を教わる機会がありません。
何でもいれていた人はこの機会に確認しましょう。洗浄器の特徴を知ると仕上がりが変わります。
そして、入れてはいけないものを分けると、器材が長持ちします。感染管理と、器材を大切にすることは、同じ方向を向いています。
明日からできる3つのこと
① 「超音波に入れないもの」を、院内でリストにする
ハンドピース、ミラー、ゴムのものとは別に院内で迷いやすい器材があれば、洗浄器の横に貼っておきます。スタッフが迷わない方法です。
② 底置きと、重ね入れをやめる
今日の洗浄から確認してみましょう。バスケットに入れる、器材が重なっていないか。液面から出ていないかの確認をみんなで意識します。
③ バスケットの網目と、水量線を確かめる
網目が細かすぎないか。水量線まで入れているか。どちらも今すぐ確認ができます。
まとめ
- 超音波は「入れれば落ちる」ではなく「泡が届けば落ちる」……泡を吸う材質のものは、まわりの洗浄まで弱める
- 入れてはいけないもの……ハンドピース・エンジン類/ゴム・シリコン・軟らかいプラスチック/鏡面・コーティングのある器材/接着・はめ込みの器材。血液が乾いたものは「入れても落ちない」
- 効かなくなる入れ方……底置き・重ねる・液面から出す・空気だまり・細かすぎる網目
- 超音波洗浄は洗浄であって、消毒ではない……取り出したあと、消毒か滅菌へ
- 可否と条件は製品ごとに違う。いちばん確かな答えは取扱説明書
当たり前に使ってきた機械の、当たり前を一度ひっくり返してみる。それだけで、同じ機械が、ずっと確かな道具になります。
超音波洗浄は、洗浄から保管までつながった一連の流れの一部です。全体像はこちらにまとめています。
→ 器材再生処理まるごとガイド|洗浄・消毒・滅菌・保管の全体像
参考:一般社団法人日本医療機器学会『医療現場における滅菌保証のガイドライン2026』(第6章 超音波洗浄器、附属書6A・6B・6C)/同『医療現場における滅菌保証のガイドライン2015』(付属書C 図3-5)/CDC “Guidelines for Infection Control in Dental Health-Care Settings — 2003″/日本歯科医学会監修『エビデンスに基づく一般歯科診療における院内感染対策実践マニュアル』/各メーカーの取扱説明書。本記事は2026年10月時点の情報にもとづいています。お使いの器材と洗浄器の条件は、必ずメーカーの取扱説明書でご確認ください。図3-5は出典を明記した引用として、加工せずに掲載しています。

長谷川 雅代
歯科衛生士(臨床30年以上)/歯科感染管理協会 監修
1993年堺歯科衛生士専門学校卒。30年以上の臨床経験を持ち、現在も臨床に立ち続けることで「歯科医院の今」を熟知する。その豊富な知見を強みに、スタッフ教育や院内環境の改善に携わる。DHマネジメント協会に所属し、新人教育や標準予防策に基づく意識改革を提案する専門家として全国で研修を行う。理想論に留まらない、現場を知るからこそ可能な実践的感染管理システムの構築とマニュアル整備に注力している。
